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プログラムノート

ムソルグスキー(リムスキー=コルサコフ編)

交響詩「禿山の一夜」

作曲者のモデスト・ムソルグスキー(1839-1881)は,民族主義的な音楽の創造を目指していた作曲者集団「ロシア5人組」の中の1人です。最も有名な作品は組曲「展覧会の絵」でしょう。彼は42年の生涯の間にアルコール依存症に苦しみながらも、多彩なジャンルで独創性のある魅力的な作品を残しています。本作品もその一つで、「聖ヨハネ祭の夜の魔物たちの大騒ぎを音楽で描く」というアイデアから始まりました。1867年に「禿山のヨハネ祭の夜」として完成しますが、5人組の仲間であるバラキレフにオーケストレーションを批判されてお蔵入り。1872年に「ロシア5人組」の合作オペラ・バレエ「ムラダ」を作る計画が持ち上がったときには、合唱を加えて書きかえたものの計画が中断・・・と悲運の連続でした。この曲が脚光を浴びるようになったのは、ムソルグスキーの死後です。5人組の仲間リムスキー=コルサコフが、最終的なピアノ譜に手を加えた管弦楽版を完成させ、1886年に『禿山の一夜』として世に送り出しました。世界中で演奏されるようになったのは、リムスキー=コルサコフの巧みなオーケストレーションのお陰のようです。

曲は3部形式です。スコアには以下の内容が記されています。「地下から響く不気味な声。闇の精(弦楽器の3連符で魔物が夜の闇を飛び、叫ぶ)、続いて闇の精・闇の神チェルノボーグが登場(中低音楽器、金管楽器・トランペットのファンファーレが象徴的)。闇の神への賛美と黒ミサ(弦楽器と木管楽器が静かに呪文を唱え始めます)、魔女たちの饗宴。狂乱の頂点(演奏している私たちも難リズムや連続トリルで半狂乱!?)で教会の鐘が鳴り,闇の精たちは消え去る。夜明け(ハープが日の出を告げ,クラリネットとフルートのソロが朝焼けの空と穏やかな朝を表現)」。数あるヴァージョンの中から、本日はリムスキー=コルサコフ編でお届けいたします。

(フルート 黒沢理絵)

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チャイコフスキー

バレエ音楽「白鳥の湖」作品20 ハイライト

「白鳥の湖」、それは、クラシック音楽やバレエに興味がなくとも、一度は聞いたことがある名前。

「白鳥の湖」、それは、誰しもが聴いたことがあるあの有名なメロディ、古今東西老若男女をいたく感傷的にさせてきました。

「白鳥の湖」、それは、愛する2人が悪魔によって引き裂かれ、現世では結ばれない悲しい愛の物語です。

悪魔の呪いで白鳥にされてしまったオデット、唯一人間の姿に戻ることができる夜、ある夜、湖のほとりでジークフリート王子に見そめられます。呪いを解く唯一の方法は、まだ誰をも愛したことがない男性に愛を誓ってもらうこと、王子はオデットを舞踏会に誘います。だがあろうことに、舞踏会で王子は、魔法でオデットに似せた悪魔の娘・黒鳥に愛を誓ってしまい、絶望したオデットは湖にたち帰ってしまいます。間違いに気付いた王子は湖にオデットを追いかけていき、そこで悪魔と戦うことになります。何とか悪魔を打ち負かしたものの、それでも悪魔の呪いは解けず、絶望した2人は湖に身を投げ静かに昇天していきます。2人が来世で幸せに結ばれたかどうかは、皆様の豊かな想像力におまかせしたいと思います。

さて、本日は天才チャイコフスキーの名曲中の名曲、バレエ音楽「白鳥の湖」をハイライトでお聴き頂きます。バレエの全曲は4幕で2時間以上にもおよぶ超大曲、しかも全幕の隅から隅までが名曲で満たされています。本日はその中の超名曲が抜粋され演奏される「組曲版」の5曲に、バレエ版の終曲を組み合わせて演奏致します。

1曲目「情景」は、王子とオデットが出会う湖の情景です。これが一番有名な「あのメロディ」です。

2曲目「ワルツ」は、王子の求めで村娘たちが踊るシーンです。次から次へと変化に富んだ美しいワルツが奏でられるのが特徴的です。

3曲目「小さな白鳥たちの踊り(4羽の白鳥の踊り)」はファゴット独特のとぼけたリズムに乗って白鳥たちが可憐に踊るシーンです。

4曲目「情景」は白鳥の湖のクライマックスとも言える王子とオデットが愛を語るシーンです。ハープ、独奏ヴァイオリンおよび独奏チェロが純粋な愛に満ちあふれた旋律を奏でます。

5曲目「ハンガリーの踊り(チャルダーシュ)」は、王妃主催の舞踏会での踊りで、速いテンポで半狂乱する激しい踊りが特徴的です。そして5曲目から間をあけることなく終曲に突入し、1曲目の「あのメロディ」が再現します。最後に王子が悪魔と戦い、その後にオデットと王子が昇天する大変激しく情熱的、感動的で、かつようやく訪れた穏やかな心地で幕を閉じます。

今回はオーケストラでの演奏ですが、皆さんバレエ版を見たくなりましたか?今はいろいろな動画が入手しやすくなりましたので、本日お聴きになってご興味が湧きましたら、是非バレエ版もご覧になって下さい。踊りや情景がただただ美しく、次から次へと奏でられる魔法の音楽にすぐに魅了されることでしょう。さらに、2010年にアメリカで公開された映画「ブラック・スワン」は、この白鳥の湖のバレエが舞台になっておりまして、正反対の性格の白鳥と黒鳥を一人二役で演じることで精神錯乱に陥っていってしまう怖ーい物語ですので、こちらもご興味がありましたらどうぞ。

華麗なるバレエのステージを思い浮かべながら是非お楽しみ頂ければと思います。

(ヴァイオリン 志磨 健)

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リムスキー=コルサコフ

交響組曲「シェヘラザード」

リムスキーコルサコフ作曲の交響組曲「シェヘラザード」はアラビアンナイト(千一夜物語)をモチーフとする曲です。この物語は、機知に富む娘シェヘラザードが心を閉ざした王シャハリヤールに、毎夜物語を語ることで心を解かせ、千一夜目、二人は夫婦としての愛を誓うに至るお話です。語られる物語には、シンドバッドやアラジンなど、多くの英雄が登場しますが、この曲の主人公は、語り部であるシェヘラザードと聞き手の王です。曲中、ヴァイオリン独奏による旋律がシェヘラザードを、低音を中心に奏でられる不気味な旋律が王を象徴しており、同じ旋律が表情を変えて何度も奏でられます。旋律の変化と共に、二人の愛へ至るまでの葛藤と喜びを思い浮かべてみてはいかがでしょうか?

第一曲:海とシンドバッドの船

冒頭の全オーケストラによる旋律がシャハリヤール王のテーマです。孤独な王を象徴するように不気味かつ壮大に奏でられます。続いてシェヘラザードを象徴する独奏ヴァイオリンの旋律が妖艶ながらどこか不安げに奏でられたのち、雄大な和音と共に物語が始まります。語られるのはシンドバッドの物語で、大海原を行く船旅と旅先での出来事が、海のうねりのような2拍子にのせて奏でられます。

第二曲:カランダール王子の物語

ヴァイオリン独奏によるシェヘラザードのテーマと共に始まります。第一曲よりも力強く、徐々に想いを強めるシェヘラザードの心を象徴するかのようです。続くファゴットにより落ち着いた旋律と共にカランダール王子の物語が始まります。カランダールとは托鉢僧のことで、この物語はとある国の王子が不遇な出来事により托鉢僧となって放浪することになったお話です。出逢い、喜び、災難、困惑、様々な出来事に遭遇した僧侶の波乱万丈な身の上のように、多様なテンポの旋律が目まぐるしく移り変わって奏でられます。

第三曲:若い王子と王女

表題にふさわしく、冒頭から美しい旋律がヴァイオリン合奏により爽やかに奏でられ、全曲を通して様々な楽器により繰り返されます。中盤に登場するヴァイオリン独奏と続く全オーケストラによるクライマックスは劇的かつ情熱的で、シェヘラザードと王の間に芽生えた愛と確信を暗示するかのようです。最後は運命が駆け上がっていくように、軽やかに締めくくられます。

第四曲:バグダッドの祭り。海。船は青銅の騎士のある岩で難破。終曲

冒頭、躍るような王のテーマと力強さを増したシェヘラザードのテーマが交互に奏でられ、そののち、表題の通り、祭りの音楽が始まります。活気にあふれる街と、準備で大忙しの人々を象徴するかのように、至る箇所で様々な楽器により素早いパッセージが奏でられます。各奏者の名人芸にご注目ください。その後、はじめの出逢いを思い出すように、一曲目の海のテーマが再現されます。最後は、静かにシェヘラザードのテーマが奏でられたのち、応えるように王のテーマが穏やかに奏でられると共に、独奏ヴァイオリンが相槌を入れることで二人の合奏となります。最後は、二人の喜びの余韻に浸るかのように締めくくられます。

(チェロ 鈴木基也)

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